教職研修資料2015/9/1 No.506発行
無断転載・加工禁止
■教育行政のポイント
「専門スタッフ」とのチーム体制
菱村 幸彦
さる7月16日,中央教育審議会の「チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会」が,中間まとめを初等中等教育分科会に提出した。
中間まとめは,〈1〉専門性に基づくチーム体制の構築,〈2〉学校のマネジメント機能の強化,〈3〉教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備の3本の柱を立てて「チーム学校」の在り方について提言している。が,ここでは,〈1〉について述べる。
●9つの職務を担う専門スタッフ
「チーム学校」の主たるねらいは,教員の過重な勤務負担の軽減にある。2013年のOECDの教員調査(TALIS)や2015年の文科省の教員業務実態調査等により,我が国の教員がオーバーワークの状況にあることは明らかだ。加えて,少子化の進行で教職員数は減少の一途をたどっている。
文科省は,毎年のように教員定数改善計画を策定して,教員の定数増を要求しているが,2011年に小学1年の35人学級が実現した以外,財務省の厚い壁に阻まれて基礎定数の増加は実現できないでいる。昨年の予算編成では,財務省から小学1年の35人学級を40人学級に戻す逆提案が出されるなど,状況はさらに厳しい。
そこで,これまでとは違う論理で,学校の人的組織の充実を図ろうという戦略に立って,「チーム学校」の構想となったわけだ。
中間まとめは,教職員に加え,多様な職種の専門スタッフを学校に置き,教職員と専門スタッフがその専門性を発揮し,チームとして学校の総合力,教育力を最大限に発揮できる体制を構築することを提言している。そして,専門スタッフとして,次の9つの職種を挙げる。
(1) スクールカウンセラー 不登校の改善,いじめ・問題行動の未然防止や早期対応等の役割を果たす上で拡充が必要。
(2) スクールソーシャルワーカー 福祉の専門家として,問題を抱える児童生徒への働きかけや関係機関との連携・調整等の役割を果たす上で重要。
(3) 医療的ケアを行う看護師 特別支援学校,小・中学校ともに医療的ケアを必要とする児童生徒数が増加傾向にあり,その対応が必要。
(4) 特別支援教育支援員 障害のある児童生徒等の日常生活上の介助,発達障害の児童生徒等に対する学習支援などの役割を担う上で重要。
(5) ICT支援員 ICTを活用した授業等をスムーズに行えるようICT支援員の配置の拡充が必要。
(6) 学校司書 学校図書館法の改正により,学校司書配置の努力義務が課された。言語活動,アクティブ・ラーニングを支援する役割に期待。
(7) 部活動支援員 運動部指導者は,保健体育科教員でもなく,担当する部活動の競技経験もない教員が4割を超える。経験のある支援員が必要。
(8) 英語指導の外部人材と外国語指導助手(ALT) 次期学習指導要領の改訂に向けて,ALTの確保が急務。特に小学校ではALTの充実とともに,英語に堪能な地域人材の活用が必要。
(9) 教育活動を充実するサポートスタッフ 多様な子供の実態に応じた指導を行うため,多様な経験を持つ地域人材をサポートスタッフとして活用。
●法令上の位置付けと予算措置
中間まとめは,専門スタッフが有効に機能するために,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー,看護師,部活動支援員について,その位置付けを法令上明確にすることを検討するよう求めている。法令上の位置付けも必要だが,まずは専門スタッフを配置するための予算措置が不可欠である。
(ひしむら・ゆきひこ=国立教育政策研究所名誉所員)
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「専門スタッフ」とのチーム体制
菱村 幸彦
さる7月16日,中央教育審議会の「チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会」が,中間まとめを初等中等教育分科会に提出した。
中間まとめは,〈1〉専門性に基づくチーム体制の構築,〈2〉学校のマネジメント機能の強化,〈3〉教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備の3本の柱を立てて「チーム学校」の在り方について提言している。が,ここでは,〈1〉について述べる。
●9つの職務を担う専門スタッフ
「チーム学校」の主たるねらいは,教員の過重な勤務負担の軽減にある。2013年のOECDの教員調査(TALIS)や2015年の文科省の教員業務実態調査等により,我が国の教員がオーバーワークの状況にあることは明らかだ。加えて,少子化の進行で教職員数は減少の一途をたどっている。
文科省は,毎年のように教員定数改善計画を策定して,教員の定数増を要求しているが,2011年に小学1年の35人学級が実現した以外,財務省の厚い壁に阻まれて基礎定数の増加は実現できないでいる。昨年の予算編成では,財務省から小学1年の35人学級を40人学級に戻す逆提案が出されるなど,状況はさらに厳しい。
そこで,これまでとは違う論理で,学校の人的組織の充実を図ろうという戦略に立って,「チーム学校」の構想となったわけだ。
中間まとめは,教職員に加え,多様な職種の専門スタッフを学校に置き,教職員と専門スタッフがその専門性を発揮し,チームとして学校の総合力,教育力を最大限に発揮できる体制を構築することを提言している。そして,専門スタッフとして,次の9つの職種を挙げる。
(1) スクールカウンセラー 不登校の改善,いじめ・問題行動の未然防止や早期対応等の役割を果たす上で拡充が必要。
(2) スクールソーシャルワーカー 福祉の専門家として,問題を抱える児童生徒への働きかけや関係機関との連携・調整等の役割を果たす上で重要。
(3) 医療的ケアを行う看護師 特別支援学校,小・中学校ともに医療的ケアを必要とする児童生徒数が増加傾向にあり,その対応が必要。
(4) 特別支援教育支援員 障害のある児童生徒等の日常生活上の介助,発達障害の児童生徒等に対する学習支援などの役割を担う上で重要。
(5) ICT支援員 ICTを活用した授業等をスムーズに行えるようICT支援員の配置の拡充が必要。
(6) 学校司書 学校図書館法の改正により,学校司書配置の努力義務が課された。言語活動,アクティブ・ラーニングを支援する役割に期待。
(7) 部活動支援員 運動部指導者は,保健体育科教員でもなく,担当する部活動の競技経験もない教員が4割を超える。経験のある支援員が必要。
(8) 英語指導の外部人材と外国語指導助手(ALT) 次期学習指導要領の改訂に向けて,ALTの確保が急務。特に小学校ではALTの充実とともに,英語に堪能な地域人材の活用が必要。
(9) 教育活動を充実するサポートスタッフ 多様な子供の実態に応じた指導を行うため,多様な経験を持つ地域人材をサポートスタッフとして活用。
●法令上の位置付けと予算措置
中間まとめは,専門スタッフが有効に機能するために,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー,看護師,部活動支援員について,その位置付けを法令上明確にすることを検討するよう求めている。法令上の位置付けも必要だが,まずは専門スタッフを配置するための予算措置が不可欠である。
(ひしむら・ゆきひこ=国立教育政策研究所名誉所員)
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