役員信認「数ではっきり」 株主総会 高額報酬も批判の的 (1/2ページ)
2010.6.10 05:00
3月期決算企業の株主総会が今月29日にピークを迎える。今シーズンの目玉は、経営陣に対する役員選任議案の賛否数が明らかになることだ。役員への信認度が数字で表れるため、株主からの“成績表”が突きつけられる格好だ。総会後に提出する有価証券報告書には、年間1億円以上の高額報酬を得ている役員の名前と報酬額を開示する決まりに変わり、総会では報酬額に対する質問が相次ぐ可能性がある。業績不振企業や同業他社に比べて高額な報酬を得ている企業の役員は「もらいすぎ批判」にもさらされそうだ。
富士通「波乱含み」「反対票が思ったよりも多ければ、その後の経営姿勢にも影響がある」
大手メーカーのIR(投資家向け広報)担当者は、こう顔をくもらせる。総会での議案可決には、一般的には過半数の賛成票があればよい。ただ、今回からは金融庁に提出する臨時報告書で、個別議案の賛否割合の記載が義務づけられ、反対票がどれだけあったかが白日の下にさらされる。とりわけ、役員選任議案は経営陣への不満が反対票としてぶつけられるので、企業側も結果に戦々恐々だ。
元社長辞任をめぐる騒動があった富士通に対しては、機関投資家に議決権行使をアドバイスする助言会社が、すでに取締役再任案に反対を表明している。富士通では「事実誤認もあり、一方的な判断だ」と反論しているが、波乱含みの総会になりそうだ。
開示に強い異論
一方、関心が高い1億円を超える年間報酬額をめぐっては、有価証券報告書での開示に先立ち、総会で株主から説明を求められる可能性がある。資生堂は総会前にすでに公表。開示に前向きな企業が出てきただけに、その姿勢が問われそうだ。
役員信認「数ではっきり」 株主総会 高額報酬も批判の的 (2/2ページ)
2010.6.10 05:00
みずほフィナンシャルグループ(FG)に対しては、役員報酬が1億円を上回らない役員も開示するよう株主提案が出されているが、みずほFG側が反対意見を出している。
高額報酬で注目の的は日産自動車のカルロス・ゴーン社長。株主招集通知によると、取締役1人当たりの報酬額は1億6900万円と、トヨタ自動車(3752万円)の4倍と業界でも突出している。ゴーン社長の報酬が高いためとみられる。高額報酬の開示には、証券界や経済界から異論が強かった。「単に金額を見て社会的な批判が起こるとすれば、好ましいことではない」(斉藤惇東京証券取引所社長)からだ。しかし、株主にとっては高額報酬の妥当性については知りたいところ。大和総研の鈴木裕主任研究員は「株主への説明責任がさらに求められる」と指摘している。
独立役員にも注目
さらに、投資家による企業チェックが厳しくなりそうなのが「独立役員」制度だ。これは、東証が上場企業に対して、株主保護と経営の透明性維持を目的として義務づけた。独立役員は社外取締役と社外監査役の中でも独立性が高い者と規定され、6月末までに独立役員の設置状況を記載した報告書を東証に提出することになっている。
社外取締役について企業年金連合会ではすでに、役員を相互派遣している企業の役員や、役員と親族関係にある者は認めない方針を決めている。
今シーズンの集中日に総会を開催する企業の割合は、昨年より約4ポイント低い45.4%と過去最低になる見通しで、複数銘柄を保有する投資家にとっては総会に参加しやすくなる。総会に出席する投資家も増えることになりそうだ。(川上朝栄)
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